みなし残業とは、あらかじめ一定時間の残業を想定しておき、実際の労働時間に関係なく残業代を支払う給与制度のことです。「みなし」という言葉から違法性が高いというイメージがありますが、労働基準法の要件を満たせば導入でき、会社独自の就業規則を設定することもできます。具体的な要件としては、「基本給と残業代が明確に分けられている」「就業規則と労働条件を明示している」「規定時間を超過した際には差額を支払う」などが挙げられます。みなし残業には、大きく分けて固定残業代制とみなし労働時間制の2種類があります。
固定残業代制は、基本給や年俸などに固定の残業代が含まれている給与制度です。職種に限らず適用できます。ただし、一月に何時間分の残業代が含まれるかを定めておかなければなりません。一方みなし労働時間制では、営業職など実際の労働時間を把握しづらい職種に対して、あらかじめ毎月の労働時間を定めて給与を支払います。
労働時間のうち、1日8時間を超えた部分がみなし残業となります。そしてみなし労働時間制は、事業場外労働・専門業務型裁量労働制・企画業務型裁量労働制の3つに分類されます。事業場外労働は、外回りの営業職・旅行会社の添乗員・在宅勤務者・テレワークなどが該当します。社内に戻ってからの労働もみなし労働時間です。
また専門業務型裁量労働制は、研究者・弁護士・プロデューサー・インテリアコーディネーター・デザイナー・建築士など厚生労働大臣から指定された19種類の特定専門職に適用されます。さらに企画業務型裁量労働制では、経営企画・経理・人事・広報など対象となる分野が限られているという特徴があります。